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アキレス腱断裂
アキレス腱断裂は、スポーツ愛好家に起こりやすいケガです。足の関節の後ろに強い衝撃や特有の断裂音を感じ、つま先立ちができなくなります。日常生活やスポーツ生活に大きな影響を与えてしまいます。症状が肉離れと似ていることから、アキレス腱断裂が見逃されることもあるため、早期に整形外科を受診し、適切な診断を受け、治療をはじめることが早期回復には不可欠です。
目次
アキレス腱断裂とは
アキレス腱は、ふくらはぎの腓腹筋とヒラメ筋から踵骨（かかとの骨）につながる腱です。腓腹筋とヒラメ筋の収縮を踵に伝える腱なので、この腱が断裂すると、ふくらはぎの筋肉を収縮させても踵が上がらないため、つま先立ちができなくなります。
アキレス腱断裂とはアキレス腱が部分的または完全に切れてしまう外傷で、10代からでも発症が見られますが30〜50歳代のスポーツ愛好家に症状が現れるケースが多いです。日常生活やスポーツへの影響が大きいため、早期の診断と治療が重要です。治療法は保存療法と手術療法に分かれ、再発防止と機能回復のためにリハビリも欠かせません。
アキレス腱断裂の原因
アキレス腱断裂の原因として、小さな損傷が蓄積し腱が弱くなっていたことが一因といわれています。しかし、若いスポーツ選手の中には「調子が良かった時に起きた」と語るケースもあり、筋肉の収縮力と腱のバランスが崩れたことによる要因も考えられます。つまり筋肉のコントロールが不十分な状態で、通常以上の負荷が腱にかかることで断裂が起こるといえます。
また、中高年の場合は、筋肉や腱の柔軟性が低下してくるだけでなく、運動不足による筋肉制御力の低下も影響しているでしょう。特に久しぶりに運動をするといった場合には、ストレッチやウォーミングアップを十分に行い、腱に急激な負荷をかけないようにしましょう。
アキレス腱断裂の症状
アキレス腱断裂の特徴的な症状は、急激な痛みとともに歩行困難になることです。受傷時には「バチッ」や「パン」といった破裂音が聞こえることが多く、受傷時の衝撃を「後ろから誰かに蹴られた」「バットで殴られた」「ボールが当たった」等と表現することが多いのも特徴です。
アキレス腱が切れると、ふくらはぎに力を入れてもその力が伝わらず、踵で地面を蹴ることができなくなります。このため、歩行や立つことが難しく、日常生活に支障をきたします。スポーツや運動中に発生することが多いため、突然の激しい痛みを伴う断裂音を感じた場合は、迅速に整形外科を受診しましょう。
＜アキレス腱断裂の主な症状＞
- 受傷時の「バチッ」や「パン」といった破裂音
- 受傷時のふくらはぎを強く叩かれた感覚
- ふくらはぎからかかと後方の痛み
- 脚に力が入らない
- つま先立ちができない
アキレス腱断裂の検査と診断
アキレス腱断裂の診断は、まず医師が患者さんの症状を聞き、視診や触診を行います。腫れや内出血の確認や、足の動きに対する反応をチェックし、アキレス腱の断裂が疑われる場合には、さらに詳細な検査を行います。
膝を直角に曲げた状態でふくらはぎを強く圧迫するThompsonテストで足関節が全く動かない場合は、アキレス腱断裂と診断します。診断が確定すると、治療方針が立てられ、早期に適切な治療を始めることが可能になります。アキレス腱断裂は、日常生活での歩行復帰や競技への復帰のためにも、早期の治療開始が重要です。
アキレス腱断裂の治療法
アキレス腱断裂の治療法は、大きく分けて保存療法と手術療法があります。保存療法では、足をギプスやアキレス腱断裂専用の装具で固定し、一定期間安静にすることで回復を図ります。一方、手術療法は、手術によって断裂部分を縫合し、腱を再建します。手術療法は保存療法より歩けるようになるまでの期間が短いため、アスリートはほとんどの場合、手術療法を選択します。
保存療法
アキレス腱断裂の保存療法は、手術を避ける場合や軽度の断裂に適応される治療法です。主に高齢者や運動量が少ない人、または断裂の程度が比較的小さい患者さんに選ばれます。保存療法の基本は、足を固定して安静を保つことです。ギプスや足首の固定具を使い、腱にかかる負担を最小限に抑えます。固定期間は約2～4週間です。
安静期間を過ぎれば、ギプス固定をしている間も松葉杖を使っての歩行が可能となります。その後、医師や理学療法士の指導のもと、装具を使ってのトレーニング、筋力回復トレーニング等を行います。治療は、回復の程度に合わせて調整しながら行います。保存療法は手術に比べて体への負担が少ないものの、回復期間は長めとなります。
手術療法
アキレス腱断裂の手術療法は、腱が完全に断裂した場合や、早期にスポーツや日常生活に復帰したい場合に選ばれる治療法です。特にスポーツ選手の治療では、95％以上の整形外科施設で手術療法が選択されています。
手術では、断裂したアキレス腱を縫合して再接合し、腱の機能を回復させます。手術は一般的に局所麻酔または全身麻酔で行われ、傷口は小さく目立たないことが特徴です。手術後1～2週間は装具で足を固定し安静を保ちます。その後、歩行やランニング等の運動を再開するためのリハビリテーションを開始します。段階的に負荷をかけることで、筋力や柔軟性を取り戻します。
再生医療（PRP療法）
アキレス腱断裂の治療において、近年注目されている新しいアプローチです。再生医療では、自己細胞を活用して損傷した腱を修復・再生することを目指します。具体的には、患者さん自身の血液や脂肪から採取した幹細胞を使用して、腱の再生を促進する治療法です。
これにより、腱の治癒を早め、機能回復を助けることが期待されます。また、成長因子を用いた治療法も有効で、これにより腱の修復を早期に進めることができます。再生医療は、特に再発を防ぎたいスポーツ選手や、手術後の回復を早めたい患者さんにとって有効な選択肢となる可能性があります。
アキレス腱断裂の治療期間は？
アキレス腱断裂の治療期間は、治療法や患者さんの状態により異なりますが、保存療法の場合は通常歩行への復帰に3ヶ月、全治6か月程度とされています。手術療法の場合は、通常歩行に2ヶ月で復帰可能で、3ヶ月程度でスポーツへの復帰が可能とされています。いずれの場合も、早く確実に治し、再断裂を予防するためにも、医師や理学療法士の指導を厳守することが大切です。
歩けるまでは最短で2ヶ月
アキレス腱断裂の治療後、歩けるようになるまで手術療法の場合で、最短約2ヶ月です。保存療法では3ヶ月程度かかります。どちらの場合も最初はギプスや専用装具での固定が必要となり、その後回復の状況をみながらリハビリを行うことで徐々に歩行が可能になります。
全治はおおよそ6ヶ月
アキレス腱断裂の全治にはおおよそ6ヶ月かかります。治療方法や個人差により期間は異なりますが、固定期間が終わるとリハビリを重ねて腱の強度や柔軟性を回復させる必要があります。回復段階に応じた適切なリハビリが、日常生活や競技生活への復帰をスムーズにします。
まとめ
アキレス腱断裂は、主にスポーツ時にかかる急激な負荷や強い衝撃によって発生し、強い痛みと共に歩行困難を伴います。治療法には、保存療法と手術療法があり、患者さんの年齢や活動レベルに応じて選択します。保存療法は高齢者や軽度の断裂に適しており、足の固定を行い、自然治癒を促します。一方、手術療法は完全断裂の場合や早期回復が求められる場合に選ばれ、腱の縫合手術を行います。 通常歩行が可能になるまでの期間は手術療法で最短2ヶ月、保存療法で3ヶ月程度。歩行復帰後もリハビリが必要で、完治までには時間がかかります。また、近年では低侵襲で治療効果が高い再生治療も注目されています。 アキレス腱断裂は、適切な診断と治療を受けることで、早期に日常生活やスポーツに復帰することが可能です。
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大学病院や総合病院で整形外科診療を重ね、埼玉メディカルセンターに約10年勤務。脊椎手術は累計1,700件以上（腰椎1,100件、頸椎520件、その他80件）、その他手術も460件以上の執刀経験を持ちます。整形外科専門医・脊椎脊髄病認定医・名誉指導医などを有し、首や腰の疾患を中心に幅広い整形外科疾患に対応しています。
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