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MRI検査
画像診断の中でも身体への負担が少なく、体内の状態を詳細に観察できる医療技術として、MRI検査は様々な診療科で活用されています。放射線を使わないので安全に神経・筋肉・関節・内臓・血管などの軟部組織を鮮明に映し出します。
今回は、CTとの違いや検査でわかること、実際の流れや注意点等を、初めてMRT検査を受ける方にもわかりやすく解説します。
目次
MRI検査とは
MRIは、”Magnetic Resonance Imaging”を略したもので、磁気の力と電波を利用して、臓器や血管を撮影する検査方法です。放射線を使用しないため、被ばくの心配がなく、身体への影響が少ないため、安心して検査を受けることができます。
検査の原理としては、体内の水分である水素原子に対して、磁力や電磁波を用いることで核磁気共鳴を起こし、それによって収集したデータを画像化するものです。体内の水分はどの部位にも存在しているので、幅広い病態について詳しく調べることができる優れた検査方法です。
CT検査との違い
| CT検査 | MRI検査 | |
|---|---|---|
| 撮影原理 | 放射線（X線）を利用した検査 | 磁場と電波を利用した検査 |
| 撮影時間 | 比較的短位い（1部位：約10分） | 比較的長い（1部位：約20〜1時間） |
| メリット | ・騒音、閉塞感が少ない ・撮影時間が短い ・骨、肺の内部構造などが明確に描出される ・体内に金属が入っていても撮影ができる ※ペースメーカ・ICDは機種によって撮影できません |
・放射線による被ばくがない ・軟部組織構造の描出に優れている ・骨によるアーチファクトが少ない ・造影剤を使用せずに血管の走行を描出できる |
| デメリット | ・放射線による被ばくがある ・MRIに比べて軟部組織の変化がわかりにくい ・骨に囲まれている部位はアーチファクト（画像の乱れ）が出やすい |
・閉塞感がある ・撮影時間が長い ・騒音が発生する ・骨などの石灰化層の情報が得にくい ・磁気に反応する金属などが体内にある場合、検査を受けられないことがある |
CT（コンピュータ断層撮影）検査とMRI検査は、どちらも体内の画像を得るための検査ですが、使用する技術が異なります。
CTはX線を使って身体の断面を撮影し、透過したＸ線の量を解析することで、骨や臓器の状態を詳細に確認できるというものです。MRIと比較すると検査時間が短いため、緊急性の高い外傷等の場合にも有効とされます。
これに対してMRI検査は、高周波の磁場によって起こる核磁気共鳴を利用して詳細な画像を得ることを得意とします。ただし、CTと比べると検査に時間がかかります。一つの断面を複数の撮影方法で比較でき、放射線による被爆の心配なく検査が可能なMRIは、神経系や筋肉の病変の診断に優れています。
MRI検査で何がわかる？
前述したようにMRI検査は、体内の軟部組織を詳細に可視化できるため、様々な病変を早期に発見するのに役立ちます。筋肉や靭帯、腱、関節等の他、脳、神経、脊髄等の異常を確認でき、神経障害や脳血管疾患（脳梗塞、脳出血など）の診断にも有効です。
また、がんや腫瘍、炎症の兆候、血管の異常等も明確に描出され、早期の治療方針を決定する際に非常に役立ちます。精密かつ非侵襲的な検査方法であるため、幅広い診療科で多く活用されています。
痛みやしびれの原因
MRI検査は、身体の痛みやしびれの原因を特定するために有効な検査です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症等では、骨の変形によって神経が圧迫されることでその部位に痛みやしびれが出ますが、MRIでは神経の圧迫状態や周辺組織の変化を鮮明に捉えることができるので、原因を特定して治療方針を立てることが容易になります。
筋肉や腱の軟部組織
骨や筋肉の状態に加えて、筋肉や腱、靭帯についても、変異や損傷、またその部位や程度を立体的に評価できます。このように原因を可視化できるため、その痛みやしびれが筋肉の損傷によるものなのか、炎症によるものなのか、腱の断裂や靭帯の損傷によるものなのかを明確に識別できます。軟部組織の疾患や炎症が早期かつ詳細に判明することで、迅速な治療が可能となります。
脳血管疾患のリスク
MRI検査は、血管の形状や血流異常を非侵襲的かつ高精度に可視化できるため、脳血管疾患等の早期発見においても非常に有用です。脳血管に小さな変化がある場合でもMRIで細かく観察できるため、症状が出る前にリスクを評価することが可能です。これにより、脳梗塞や脳出血、動脈瘤等、血管に関する疾患の予防措置や早期治療を講じることができ、重篤な脳血管障害のリスクを減らすことができます。
がんの早期発見
MRI検査は、軟部組織の画像診断に強く、微細な病変も発見しやすいため、がんの早期発見においても非常に効果的な手段です。特に、乳がん、子宮がん、前立腺がん、脳腫瘍等、放射線を使わずに詳細な画像を得られる点が特徴です。放射線を使用しないため、定期的な経過観察や複数回の検査が必要な場合でも安心して使用でき、がんの広がりや進行度を把握するのにも役立ちます。
MRI検査にかかる費用
MRI検査の費用は、施設や検査内容、保険適用の可否によって異なりますが、一般的に数万円程度の費用がかかります。診察の結果として医師が必要と判断した場合には、保険が適用されることが多いです。
この場合、自己負担額は通常、3割程度となります。目安としては、3割負担で8,000円〜25,000円程度となります。
MRI検査にかかる時間
MRI検査は、通常30分〜40分程度で完了しますが、検査する部位や目的によって時間が前後することがあります。事前に医師から検査の時間について説明を受けると安心です。
造影剤を使用した検査では、さらに時間がかかる可能性もあります。ただし横になった状態で検査を行うため、比較的リラックスして検査を受けていただけるでしょう。
結果が出るまでにかかる時間は？
MRI検査後、結果が出るまでの時間は、検査内容や施設によって異なりますが、一般的には当日〜数日以内に結果が判明します。検査直後に医師が簡単な説明を行うことがありますが、詳細な診断結果は放射線科の専門医による解析後に提供されます。
急を要する場合、緊急の症例では、結果が数時間以内に出ることもあります。
MRI検査ができない人
MRI検査は安全で非侵襲的な検査ですが、いくつかの条件により受けられない場合があります。
＜MRI検査を受けられない人の例＞
- 体内に金属製のインプラントがある方
- 心臓ペースメーカー
- 人工内耳を装着している方
- 金属製の人工関節
- 妊娠中の女性
- 過度の閉所恐怖症を持つ方
- タトゥーやアートメイクの施術を受けた方
- カラーコンタクトをしている方
MRI検査を受ける前に、自身の手術歴や治療歴、体調等、気になることはすべて医師や看護師に相談することが重要です。
MRI検査の流れ
MRI検査は、まず医師による診察で検査の必要性が判断され、検査予約を行います。検査当日は、受付を済ませた後、着替えを行うことが求められる場合があります。その後、検査室に案内され、専用のベッドに横たわり、体の一部または全身を機器が検査します。検査中は動かずに静止し、音が大きい機器の中で約30分〜40分程度じっと横になっておきます。検査終了後は、放射線科医が結果を解析し、数日以内に診断結果が提供されます。
検査時の注意
MRI検査を受ける際には、いくつかの注意点があります。まず、金属製の物（アクセサリー、時計、携帯電話など）はすべて外して検査を受ける必要があります。金属が強い磁場に反応するため、安全上の理由から取り外します。コンタクトレンズ、メイクをしたままの検査もできません。また、検査中は体を動かさないようにすることが重要です。体が動くと画像がぼやけてしまい、再検査が必要になる場合があります。
まとめ
MRI検査は、放射線を使わずに体内の詳細な画像を得ることができる、安全で精度の高い検査方法です。特に、筋肉、腱、靭帯、神経、脳、脊髄などの軟部組織を精密に観察することに優れているため、早期の病気発見や治 療に役立ちます。検査は無痛で、比較的短時間で終わるため、患者様の負担も少なく安心して受けられます。ただし、金属インプラントがある方や妊娠初期の方などは受けられないことがあるため、必ず事前に医師に相談してください。MRIを活用することで、疾患リスクを早期に発見し、安心安全で健康な毎日を送りましょう。
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大学病院や総合病院で整形外科診療を重ね、埼玉メディカルセンターに約10年勤務。脊椎手術は累計1,700件以上（腰椎1,100件、頸椎520件、その他80件）、その他手術も460件以上の執刀経験を持ちます。整形外科専門医・脊椎脊髄病認定医・名誉指導医などを有し、首や腰の疾患を中心に幅広い整形外科疾患に対応しています。
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